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グラントワ初見舞いと雪舟庭園巡り

 益田に島根県芸術文化センター「グラントワ」がオープンした。美術館とホールが一体となった、全国にも稀な文化施設である。私自身は、大学で建築を専攻していたこともあり、建築家内藤廣氏設計のその建物の完成を心待ちにしていた。内藤氏の説明をするには、紙面に限りがあるが、世界に誇る日本の若手建築家の一人と言えることが間違いない。素材の選び方、使い方が非常に丁寧であり、構造からくる建築の美しさを徹底して追及する。独りよがりなデザインではない、誰もが気持よさを感じることのできる空間づくりに、多くの人たちが共感する。

グラントワ中庭.jpg

 その全貌を見に、松江から益田まで小旅行をすることにした。車では片道4時間以上かかるところが、特急ではわずかに2時間と少しの時間である。車窓からの蒼い日本海の風景を眺めながら、いつしか島根県の西の端に位置するその町に来ていた。

 益田駅からグラントワ方面にはバスが頻繁にでており、来ていたバスに乗り込むと、5分ほどでグラントワに到着である。様々なメディアでは見ていたものの、その建物を目の前にして、感無量である。大きな屋根、そして壁面までもが石州瓦で覆われており、大きな四角い中庭が配されていることが特徴である。オープンして間もないころ、その静謐な中庭を舞台にし、石見神楽が舞った。息を飲むほどの感動的な光景だったという。 グラントワ副館長の高橋さんに中を丁寧に案内していただき、閉まっている大ホールに特別に入らせてもらった。舞台にあがると観客席が包み込むように迫っている。岩のかたまりのようなボリューム感あるコンクリート打ち放しの壁面が、まるで巨大な洞窟にいるような気分にさせる。どんな歌手でも、どんな演奏でも、一度ここで聴いてみたいと思わずにはいられなかった。

 美術館にくると、入口部分にライブラリーが配されている。美しいヴォールト屋根の下、テーブルに絵画の本を広げてゆったりと眺める来館者。なんとも優雅な雰囲気である。建物の中は、まるでヨーロッパの小さな美しい町のようだ。益田の町に忽然とあらわれた異空間である・・・。 グラントワを後にし、路線バスにのって、医光寺と萬福寺の雪舟庭園を見に行くことにした。医光寺の庭園は急斜面に配され、萬福寺では平面的に築かれているのが対象的である。そして、多くの観光客が訪れるような場所になっていないのがよい。医光寺では、お寺の方がまったく時間を気にするでもなく、丁寧に庭の説明をしてくれる。2つの静かな空間の中で、雪舟の時代に迷い込んだような気持のよい目眩をおこした。

 益田での1日は、現代から中世、日本とヨーロッパを往復するような不思議な感覚を私に呼び起こすものだった。次こそはグラントワの大ホールの催しを愉しみに来るとしよう。

 

旅人=田中隆一[まちかど研究室]

Last modified:2007/01/29 15:15:40
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References:[益田・津和野編]