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津和野まちなみ欲ばり歩き

 朝の津和野は静かだった。駅を出て見渡すと、やはり津和野盆地、四方は山である。

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 まずは、駅の隣の津和野町観光協会で「のんびり津和野めぐり」という観光施設入場チケット入手して、津和野のまち歩きをスタートした。

 観光協会の施設には、桑原史成写真美術館が併設されている。桑原氏は、水俣病取材で著名になった報道写真家である。来館した際の展示は、ルーマニアでエイズに蝕まれる子どもたちを写したものだった。

 写真美術館を出た向かい側には、安野光雅美術館がある。比較的新しい白い建物だが、不思議と津和野の町並みに馴染んでいる。館内は田舎の学校のようなつくりになっており、教室や図書室も併設する。渡り廊下に差し掛かったとき、ちょうどぐずついた空が明るくなった。陽の光を抜けて小学生に戻っていくようだった。

 これらの美術館の並ぶ高岡通りをしばらく進むと、旧式のポストをちょくちょく見かける。町並みとともに、時が止まっているような錯覚を覚える。途中の手打ちお蕎麦屋さんの店先に「お急ぎの方 ご遠慮下さい」と書いてあるのを見つけた。のどかである。

 古い木造家屋の路地を本町通へ抜けて、葛飾北斎美術館に向かう。北斎の「富嶽三十六景」はあまりにも有名である。津和野で初刷りの「北斎漫画」が発見されたことがきっかけで建てられたのだという。小京都にいながら江戸も楽しめる粋な空間である。

 殿町通りに入ると、整備された武家の町並みが目に入る。道幅が広く、掘割では見事な錦鯉が悠々と泳いでいる。江戸の風情の中に、荘厳な教会が建つ。津和野カトリック教会である。日本史の視点から見れば相反する組み合わせでおもしろい。教会内部には畳が敷かれており、日本人信者との距離の近さを象徴しているようだ。

 橋を渡ると、左手に津和野町郷土館がある。縄文時代から明治時代に至るまでの歴史的資料や、津和野が輩出した著名人ゆかりの品などが並べられている。外に出ると「おたすけ傘」が置いてあった。突然の雨に備えた共同傘なのだ。心温まる心遣いである。

 少し歩くと杜塾美術館に着く。1階は、中尾彰氏と夫人吉浦摩耶氏の作品が展示してある。優しい色合いとタッチに、安野氏と共通したものを感じる。建物は、津和野全124庄屋の筆頭の屋敷を修復して利用している。庭では、雨上がりの雫が葉の落ちた木で陽の光を受け、冴え冴えと輝いていた。

 昼食には、津和野の郷土料理、うずめ飯を注文した。一見単純なお茶漬けのようだが、底から混ぜ返すと様々な具がお目見えする。他にも、刺身こんにゃくや山菜の煮付け、わさび漬けなど驚きだらけの昼食だった。

 杜塾美術館を南下すると、板橋アンティックドール美術館に着く。館内は、西洋貴族のコレクション倉庫といった感じで、猫の絵や西洋人形が多数並ぶ。2階にはレースや、ドレスのモデルとなった西洋人形が次々と展示されている。街全体の江戸の風情とは違った、独特の雰囲気が漂う。

 さらに行くと、森鴎外記念館が見えてくる。館内は開放的で、ロビーからは森鴎外旧宅が、小憩ホールからは津和野川河原が眺められる。そして西周旧居へ。ここはさらにこじんまりしている。津和野の偉人は思ったより慎ましかった。

 今度は北上して津和野伝統工藝舎に向かう。「紙すき見るか」と親切にも男性が声をかけてくださった。漉き簀(すきす)の上に繊維が残ってだんだん半透明の膜ができ、ぺらりとはがして重ねられる様子は見事である。

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 次に太鼓谷稲成神社に参詣する。朱塗りの姿がだんだん全容を現すにつれて、存在感も増していく。

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 お土産の源氏巻を買いにお店に立ち寄る。地元の名産を使ったアイスクリームも販売していた。そこでお茶をなさっていた女性に、源氏巻のこしあんとつぶあんについて教えてもらう。思いがけず、地元の方とお話できる貴重な時間を過ごす。

 夕暮れが差し迫る頃、乙女峠のマリア堂に参る。わりと急な坂を上ると、その教会はひっそりと佇んでいる。薄暗いの中、清廉な雰囲気に近寄り難ささえ覚える。教会内で、来る年の願いごとを祈る。ちょうど祈り終わると、5時を告げる津和野カトリック教会の鐘の音が聞こえた。

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 続いて永明寺に向かう。津和野藩主代々の菩提寺である。また、森鴎外や大阪夏の陣で有名な坂崎出羽守のお墓もある。県内最古の禅寺で、江戸時代は石見の禅寺を統括した由緒ある寺だという。

 冬の津和野の夜は早い。夕方6時前には、日中の暖かさが嘘のように、冷たい夜気が辺りを満たす。ゆっくりとした津和野での時間は、気づけば終わりを迎えていた。

 

旅人/出雲あすみ

旅費

JR 松江駅〜津和野往復(特急利用) ●●円

津和野内は、すべて徒歩

入館料

安野光雅美術館 ●円

桑原史成写真美術館 ●円

葛飾北斎美術館 ●円

津和野町郷土館 ●円

杜塾美術館 ●円

板橋アンティックドール美術館 ●円

森鴎外記念館 ●円

津和野伝統工藝舎 ●円

Last modified:2007/03/26 01:51:07
Keyword(s):
References:[益田・津和野編]